02 4月 ティエリー・マシュエル Thierry Machuel
ティエリー・マシュエルはフランスの作曲家にしてピアニスト。その仕事の大半は、実に様々な言語で書かれた現代作家のテキストを用いた合唱曲の創作に向けられてきました。これに伴い、マシュエルのレパートリーはポエジー、言語と文化の間の特有の結びつきを際立たせたものとなっており、今では40ヶ国・地域に関わる合唱レパートリーを織りなしています。レジデント研究員としてヴィラ・メディチ(1996〜98年)とカーサ・ヴェラスケス(1999〜2001年)に滞在したティエリー・マシュエルは、フランス音楽著作権協会(SACEM)の2008年度声楽賞、ボーマルシェ財団の2009年度創作助成金や2011年度高校生が選ぶ作曲家グランプリを獲得。ヨーロッパのみならずアジアや南北アメリカでも歌われている彼の合唱曲は、2013年と2014年にはバカロレア試験にも採用されました。
剥奪の歌
レジデンス・プログラムはパウル・ツェランの詩『迫奏(ストレット)』と峠三吉の『原爆詩集』から選ばれた複数のテキストを、女性歌手2名、朗読者2名と弦楽四重奏のための作品において対比するもの。そこではドイツ語、日本語とフランス語が入り交じり、声楽が語りの声の表現の幅を広げ、詩的な言葉の響きの中に浸り切れる曲作りが目指されます。この作品の核心においては、沈黙と反言語の間で、言語活動が居住可能な世界を再構築する場ともなります。一方、弦楽器は、言葉の音や意味からは遠く、声とは別の時間性の中を手探りで進み、絶えざる本源回帰のなかで、激しく、密やかなな物語を繰り広げます。