ローレン・トルティルは、イアホンという個人的利用のための音響技術が私たちの環境の捉え方に与える影響に関心を寄せています。20世紀末から私たちの日常の至るところに入り込んだイアホンは娯楽、コミュニケーションのためや騒音公害から身を守るためなど、さまざまな使い方をされています。しかし、その結果、こうした使い方はパーソナルな音のバブルを作り出すことで外界から逃避することを促し、公共空間のある種の細分化やさらにはプライベート空間への作り替えを生み出す結果となり、こうした公共空間の定義に関する問題を提起しています。
ローレン・トルティルが提案するのは、こうした現象の出現に寄与したテクノロジーについて調査すること。例えば、初代ウォークマン「TPS-L2」の場合、ソニーによるその販売開始は一人で聴くことと同時にユーザーが「持ち運べる」ことを可能にすることで、1980年代に聴くことに大きな革命をもたらしたと言えます。ローレン・トルティルは2023年3月に東京でソニーのアーカイブを用いてこのリサーチに着手することができました。ヴィラ九条山では、この仕事を継続し、このテーマに基づくパフォーマンスと同時に図版入りのアーティスト・ブックの制作が目指されます。