ボードワン・ヴェール&ダフネ・ビイガ・ヌワナク
2026/08/28

プロフィール
ダフネ・ビイガ・ヌワナクとボードワン・ヴェールは哲学を学んだ後、ストラスブールの国立演劇学校で出会いました。以来デュオを組んで七年、舞台、音楽、ダンスの分野で共に作品を制作しています。両者は、目にするもの(イメージ)と心に感じるもの(エモーション)を上手く繋げるために、ナレーションを書きスライドを作るなど、舞台上に論理的な手法を取り入れる試みを実践。そこには、自分たちの作品を観ることによって、観客が世界をもっと強くはっきりと認識出来るようにという思いが込められています。
最新作Maya Deren(2023年)では、分断された世界で人は同じ見方をすることができるのかを問いかけました。二人はこうした活動と並行して、感動(エモーション)の歴史についての講演とパフォーマンスも定期的に行っています。そこでは、今日潰えてしまった過去における感動を、演劇が蘇らせることは可能であるという仮説を聴衆に投げかけています。
二人にとって初となるドキュメンタリー映画作品は最終的な仕上げ作業に入っており、現在は次の作品Vasari(仮題)の準備段階中。2025年、ダフネ・ビイガ・ヌワナクは批評シンジケート賞の新人賞を受賞しています。
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									Baudouin Woehl
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									Daphné Biiga Nwanak
プロジェクト
GOZE/GAZE(瞽女 /ゲイズ)
日本を渡り歩いた唄声―芸とハンデの美学の狭間で
ダフネ・ビイガ・ヌワナクとボードワン・ヴェールは、瞽女(日本中の僻地を渡り歩いて唄や語りを披露する盲目の女性芸人)の軌跡を辿ります。瞽女は、数世紀に渡り日本各地を唄い歩きながら、自身の「ハンデ」を美学として最大限に利用し、障害者が演じる際に問われる問題を克服して来ました。自らも音楽と演劇に関わるダフネ・ビイガ・ヌワナクとボードワン・ヴェールは、瞽女達のそうした生き様を詳しく探求していく予定で、こうした研究は、他のマイナーな人々(例えば、瞽女同様に女性で不安定な状況に置かれていたり、田舎に住んでいたりする人々)にも表現する道がある事を示すきっかけとなるでしょう。さらに、両者は昔の伝統的な芸を探っていくことによって、現代の舞台シーンに潜む問題点を改めて浮き彫りにします。
ヴィラ九条山に滞在中、ダフネ・ビイガ・ヌワナクとボードワン・ヴェールは瞽女に関わる貴重な情報を得るために、保管されている資料を調べ、障害のあるアーティストや教育者、研究者に話を聞きます。さらに、そうした活動と並行して、多分野にまたがる学際的なアプローチを試みたパフォーマンスも作成し、自分達が知覚したものを提供することになっています。このパフォーマンスは、目が見えない瞽女をテーマに作成されるパフォーマンスということで、本来舞台では重要な要素である視覚的効果は控えめになり、従来の舞台とはまた違った形の見ごたえのある作品になる予定です。

L’énième portrait d’une femme africaine (film), ©Daphné Biiga Nwanak

Maya Deren, ©Mathilde Delahaye