サシャ・バイダル
2026/12/26

プロフィール
サシャ・バイダルは、自身を「インターディペンデント」な芸術家、そして、東欧のクィアと定義しています。その研究者、キュレーターとしての活動は、人々の移動やディアスポラ化の経験、社会主義時代の文化的記憶と記憶の喪失、さらに多様な移動形態によって形作られた自身の家族史を中心に展開しています。活動は、ポストコロニアルやクィア理論、そして脱植民地主義的アプローチに培われており、日々、記憶の再構築、再想起、脱植民地化の実践を伴っています。
また、彼は複数のコレクティブや団体の創設関わっています。中には、Beyond the post-soviet (Btps) が協力し、「ポスト社会主義」と呼ばれてきた文化的、地理的領域に関する知識の生産と共有に取り組んでいる団体などがあります。
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Sasha Baydal
プロジェクト
渦巻く記憶 :東欧・北東アジア・日本をつなぐ非線形のまなざし
ヴィラ九条山でのリサーチは、時間軸にとらわれず、時を超えたアプローチを用いて、東欧、北東アジア、日本間の横たわるつながりを探るものです。領有をめぐり争われる千島列島の過去と現在。これを、近年の東欧から日本への移住、そしてこれらの地域間の20世紀初頭から今日まで続く芸術的交流の軌跡と響き合わせます。
本プロジェクトは、沈黙を強いられてきた物語を浮かび上がらせ、先住民のアイデンティティ抹消を問い、オリエンタリズム的想像に対し批判的な視点をもつことを目指しています。アイヌをはじめとする先住民の声や視点との対話や、20世紀初頭から続くオリエンタリズム的遺産の批判的な再解釈を通して、東欧的視座から脱植民地的言説に寄与する歴史的出来事や芸術的実践を丁寧に再検討します。

Exhibition view of Displacements and Torrents—Where the Dnipro and the Elbe Meet, curated by Sasha Baydal and Nataša Petrešin-Bachelez, Cité internationale des arts, Paris, 2024-2025. Photo: Romain Darnaud © ADAGP, Paris
